粉末用高速包装機で
圧倒的シェア
ロータリー式三方シール
包装機はこうして誕生した

粉末用高速包装機のスタンダードとして市場に定着しているロータリー式三方シール包装機。
40年前にそのロータリー式三方シール包装機を初めて市場に送り出したのがトパックです。
今なお圧倒的なシェアを守り続け、アジア市場でも「トパック」ブランドは浸透しつつあります。
開発時の苦労を正井敏夫社長に振り返ってもらうとともに、
今後のグローバル戦略について浪江専務、川隅富一郎・海外事業部次長に聞きました。

高速化の要請で
ロータリー式を着想、
試作を
繰り返し、4年がかりで完成

― ロータリー式三方シール包装機が誕生することになった
きっかけは?

正井:当時の粉体包装機は最速の機械でも毎分120袋でした。コスト当たり生産量をいかに増やすかがテーマとなっていたユーザーの期待に応えるには、包装スピードを格段に上げるしかないと考えました。特に当時はインスタントラーメンが非常に流行した時期で、そこにいれるスープの小袋包装の高速化が求められていた時代でした。

当時の高速包装機の主流は、4辺を接着する四方シール包装機でしたが、包装用フィルムが三方シール機に比べて高いことに加え、細かい粉末が4隅にたまりやすいという欠点を抱えていることから、三方シール包装機の開発に着手しました。

正井敏夫 社長

― ロータリー式という発想はどこから?

正井:当時の三方シール包装機には横型と縦型がありました。横型は、左右両側をシールした後に計量マスから落ちてくる粉体をシュートで放り込んで充填する、という容易な方法でしたが、工程ごとに別の装置を連結するためにどうしても据付に場所を取ってしまうほか、スピードが出にくいという欠点を持っていました。
一方の縦型は、計量マスまでは回転運動を使い、充填は内容物を袋に自然に落下させる方法でした。横型よりも速く、スペースもとらないことから、当時の主流は縦型でしたが、それでも一袋分の充填を終えるまで次の充填に移れないため速度に限界がありました。そこで、双方のいいとこ取りをし、計量マスから充填、そしてフィルムをシールするまでの機構を1カ所に集中させるため、ロータリー(回転盤)を使った円運動に変えることを思いつきました。これによって省スペース化を図ると同時に高速化も可能になったのです。

フィルムはまっすぐ走らせて送るというのが当時の常識でした。ロータリーの円の直径の内外の長さの差でフィルムがだぶついたり、シワが寄ったりしないか不安でしたが、いざやってみると問題がないことがわかり、ようやく1号試作機が完成しました。

― ロータリー式ならではの難しさはどんなところにあった?

正井:試作機は幼稚なレベルでした。理屈では動くはずなのですが、いざ動かしてみるとさまざまな問題が出てきました。
最初にぶつかった大きな壁は、充填シュートをフィルムの袋にどのように突っ込むかでした。バキュームで袋を開けてシュートを落とす方法もありますが、バキュームを使うとその分工程が増え、スピードを上げにくくなります。シールするまでにシュートを横からフィルムに突っ込む方法がないのか考えるうち、シュートの動きをロータリーの芯からはずし、さらにシュートの角度をふることで、フィルムの中にシュートが入るようになりました。

ここに至るまでにはずいぶんと時間がかかりました。次にシールする方法です。計量マスの円盤に熱ロールを数多くつけようかとも考えましたが、シール時間が長いほどシール強度を生むという原則を重視し、固定バーと移動バーで挟み込み、移動バーは下部で回しフィルムの入るところと出ていくところでだけ離れるようにしました。この方法により、毎分400袋を包装する速度でも十分なシール強度を保つことができることになりました。こうして2号機が完成しました。

― ようやく高速化が実現できた?

正井:2号機が完成してスイッチを入れてみると1時間ほど充填することができましたが、毎分200回転を超えたところで機械が振動を始め、高い音が鳴り、壊れてしまいました。ただ、この時点で、このやり方で間違っていないという確信を得ることができました。精度、公差を上げ、カムを溝カムに変え、本体を丈夫にすることで壊れない機械が出来上がりました。3号機の完成です。

これで完成のはずだったのですが、また新たな課題が持ち上がりました。毎分200袋の速度は達成したものの、それ以上スピードを上げると、強い遠心力が働いてしまい、計量マスからシュートの25mmのすき間から粉末がこぼれてしまったのです。こぼれた粉末は機械に悪さをしますから、同時に機械も止まってしまいました。
このときはさすがにかなり落ち込みました。確信がもろく崩れ去って、完成は無理かもしれない、と弱気になったものです。

まずは粉末をこぼれないようにすること。そして、こぼれた粉末を回収することを考えました。前者の対策として、充填するところでだけシュートと円盤の計量マスが一直線になっていればよいと考え、ロータリーと円盤とを偏心させることによって充填するところのみ周速を合わせ、計量マス、シュート、製袋されたフィルムとを一直線上にしました。そうすることによってシュートが上にいく時は計量円盤の円周から外れ、シュートが充填時に下がる時だけ円盤とすれすれに入り込むように設計しました。また、後者の対策としては、中央で粉末を回収できるよう集塵装置をつけて回収できるようにしました。

200袋、250袋、300袋と徐々にスピードを上げても分量誤差なく充填することができ、ここにようやく完成をみました。減速比率を変えながら最終的には毎分600袋を達成することができました。

― 初めての納入先は?

正井:試作の段階からラーメンスープに使ってみたいと言ってくださるユーザーがあり、納入したのは1973年1月のことでした。毎分400袋のスピードで半年間使っていただき、機械を分解して、磨耗はないか、いたんだところはないかと入念に調べ上げ、これでいけると判断。ようやく商品として発売することを決断しました。実は、それまでにも多くのお客様からすぐにでも使いたいという声をいただいていたのですが、今までにない高速機械だったので慎重に慎重を期してようやく発売することになったのです。開発着手から4年が経っていました。

― お客さんの評判はいかがでしたか?

正井:ものすごい驚きようでした。はじめは毎分400袋を充填包装できる、と説明してもなかなか信用してもらえませんでした。「そんな機械があるはずない」と。信じてもらうために当社の工場に来てもらい、お客様の使う粉体を使って機械を動かすことで機械の能力を理解してもらい、納入を増やしていきました。それまでの機械の4、5倍の速度ですからユーザーの生産性が格段に向上し、コスト競争力が上がりました。するとその他の同業者があわてて当社の機械を入れようと注文が殺到しました。生産が追いつかず、1年分の受注を抱える時期もありました。

― その後も機械は進化を続けているようですね。

正井:新たな機構を採用し、改良を加え、その都度特許、実用新案を申請しました。現在は、最も高速の機械で毎分1000袋の能力があります。扱う粉末もコーヒー、麦茶、医薬品、石灰、脱酸素剤などあらゆる分野へと広がり、現在、粉末用のロータリー式三方シール包装機では70~80%のシェアを占有しています。また、ここ5年ほどは海外市場の開拓にも力を入れており、ロータリー式三方シール包装機の売り上げのうち半数は海外向けとなっています。